【高次脳機能障害とは?】
交通事故などで脳が損傷されると、記憶能力の障害、集中力や考える力の障害、行動の異常、性格の変化、言葉の障害が生じることがあり、これらの障害を『高次脳機能障害』と言います。

【高次脳機能障害の症状】
 高次脳機能障害の代表的な症状として、認知障害と社会的行動障害があります。
 認知障害は、理解したり考えたりする能力などの障害です。社会的行動障害は、行動の障害です。

【認知障害とは?】
 認知障害には、①記憶障害、②注意障害、③遂行機能障害、④病識欠落、⑤半側空間無視、⑥失語、⑦失行、⑧失認などがあります。
 ①記憶障害には、事故以前の記憶は残っているが、新しいことを記憶しにくい短期記憶障害があります。たとえば、すぐに忘れてしまう、道順がわかなくなる、同じことを何度も質問するなどの症状があります。
 ②注意障害は、注意力や集中力が続かないなどの特徴があります。たとえば、集中できず落ち着かない、物をなくすことが多いなどの症状があります。
 ③遂行機能障害は、目的を定めたり、その目的を実現させるための段取りを立てたりすることができないほか、段取りを実行できないなどの特徴があります。たとえば、見通しを立てられない、計画を立てて物事を進めることができない、効率よく物事を進められない、すぐに諦めてしまうなどの症状があります。  
 ④病識欠落は、自分の障害を認識することが難しいなどの特徴があります。
 ⑤半側空間無視とは、左または右の半側に気付かない状態のことで、左側の半側空間無視が多くみられます。たとえば、左側の食べ物を残す、左側の人や物にぶつかるなどの症状があります。
 ⑥失語とは、言語の障害です。たとえば、話しかけられても答えられない、間違った言葉が出る、話し方が遅い、発音が不明瞭などの症状があります。
 ⑦失行とは、明らかな麻痺はないのに、道具が上手に使えなかったり、間違った使い方をしたりするなどの特徴があります。たとえば、今まで使っていた道具の使い方がわからない、着替えの時に上着・ズボン・前後・左右の区別ができないなどの症状があります。
 ⑧失認とは、視覚、聴覚、触覚などの知覚機能において、対象を把握できない障害であり、視覚失認、聴覚失認などがあります。視覚失認は、目の前に物があっても探し出せない、図形がわからないなどの症状があります。聴覚失認は、音は聞こえるが何の音かわからない、声は聞こえるが意味がわからないなどの症状があります。

【社会的行動障害とは?】
 社会的行動障害には、①依存性・退行、②感情コントロール低下、③欲求コントロール低下、④対人技能拙劣、⑤固執性、⑥意欲・発動性の低下、⑦易疲労性、⑦反社会的行動などがあります。
 ①依存性・退行は、子どもっぽくなったり、すぐに家族を頼るようになるというような特徴があります。
②感情コントロール低下は、「怒り」や「笑い」などの感情のコントロールが難しいという特徴があります。
たとえば、すぐにキレる、すぐに暴言を吐く、すぐに乱暴するなどの易怒性があり、注意を受けている時や悲しい場面での笑ってしまうなどがあります。
 ③欲求コントロール低下は、欲しいと思うと我慢できないという特徴があり、たとえば、お菓子は1袋全部食べてしまったり、お金も手元にあるだけ使ってしまうというように自制ができない症状があります。

④対人技能拙劣は、他人と上手く付き合えず、日常生活に問題が生じる状態です。
たとえば、相手の気持ちを読めない、自分の意見ばかり言い張るなどのほか、人に強く言われると断れないなどの症状があります。
⑤固執性は、どうでもいいささいなことにこだわる、物事にこだわって次のことができない、一度決めたことを状況に合わせて変更できずにやり続ける、途中で変更されると混乱するなどの症状があります。
⑦意欲・発動性の低下は、やる気がでない、ボーっとして自分から何かしようと行動を起こさない、促されないとやっていたこともやめてしまうなどの症状があります。
⑧易疲労性は、脳神経が疲れやすいことを言い、すぐに疲れる、朝起きられない、起きていても眠い、ぼーっとしている、姿勢を保てないなどの症状があります。
⑨反社会的行動は、社会的倫理を逸脱するような行動を起こすことであり、たとえば、盗み、暴力、性的行動などがあります。

【高次脳機能障害の後遺障害等級は?】
 自賠法施行令別表一第1級1号、第2級1号、自賠法施行令別表二第3級3号、第5級2号、第7級4号、第9級10号があり、後遺障害の程度に応じて等級が認定されます。
 
【高次脳機能障害の申請に必要な書類は?】
 まず、高次脳機能障害として審査されるためには、頭部外傷後の意識障害、初診時における頭部外傷の診断、頭部外傷の画像所見が重要になります。
 そして、高次脳機能障害の程度を明らかにするために、病院で神経心理学的検査を受ける必要があります。また、事故前後における日常生活の変化も主張する必要があります。
 そこで、高次脳機能障害の申請においては、後遺障害診断書のみならず、①頭部外傷後の意識障害についての所見、②神経系統の障害に関する医学的意見及び神経心理学的検査の結果、③日常生活状況報告を提出する必要があります。