こんにちは、弁護士の内堀です。

「家事従事者」の基本

今回は、交通事故賠償における「家事従事者」に関連する基本的な事項を確認していきたいと思います。

家事従事者の年収

交通事故賠償の世界では、被害者が「家事従事者」に当たる場合は、全女性の平均賃金額がその人の年収であるとみなされることになります(賠償額計算の基礎となる収入であるため、これを「基礎収入」といいます。)。ちなみに、平成27年においては、全女性の平均賃金は3,727,100円となっています。
家事に従事しているというためには、自分以外の家族のために家事を担っていることが必要になります。同世帯に本人以外の人が最低1人はいなければならず、したがって、1人暮らしの場合は家事従事者に当たりません。
専業主婦は文句なしに家事従事者といえますが、兼業主婦の場合も、勤労収入が全女性平均賃金を超えない限りは家事従事者として賠償請求する方が得になります。勤労収入を上乗せして請求できるわけではないのです。

男性でも家事従事者に

当然のことながら、家事従事者は女性に限りません。家族のために家事を行っていれば、男性でも家事従事者に当たることになります。例えば、無職の男性でも、もっぱら同居の親の介護に従事している場合は立派な家事従事者です。
もっとも、家事従事者に当たるとしても、個別具体的な事情によっては、上記の平均賃金がそのまま基礎収入として認められないこともあります。
例えば、高齢の家事従事者の場合には、年齢に応じて基礎収入を減額するという扱いがされることがあります。また、一家族のなかに家事従事者が複数いるとみられるようなときなどは、減額されてもやむを得ない場合といえるでしょう。