80代 主婦
獲得等級:7級4号

 高齢の女性、乳母車を押しての歩行中に、バックして方向転換中の(道を誤った)トラックに轢かれ、頭部に大きな損傷を受けました。事故後間もない段階で、同居のご子息は、保険会社対応に立腹。一切の保険会社との連絡を絶ち、病院代も自費、治療も病院の勧めるままにしました。治療費が1000万円近くなった段階で当職に相談があり、受任。治療費については、交渉の末、全額補償を受けました。
 問題は、後遺障害。退院後、介護老人保険施設に送られ、その後、病院での診察を受けていませんでした。確かに、高次脳機能患者の治療は、リハビリが中心であり、入院必須の治療行為がなされるわけではありません。治療行為を要する新規の患者を受け入れないといけない一次病院での治療期間は、制限される方向にあります。リハビリのことを考えれば、病院では無く、介護老人保険施設(リハビリにより自宅復帰を目指す施設)でリハビリをするという政策も理解できる部分があります。
 しかし、脳梗塞とかの病的な場合は、ともかく、交通事故の場合は、治療行為→症状固定という流れで物事が動きますので、介護老人保健施設が病院でなく、医師の治療行為が無い以上、交通事故賠償手順から外れてしまいます。タイトルの如く、一次病院退院後、医師の手から離れ、以後、レセプトが一切出てこなくなるのです。当職への相談時介護老人保健施設に2年ほど過ごされた後で、後遺障害認定手続きから苦労することになりました。後遺障害診断書の書き手がいないのです。無論、一次病院の医師からすれば、とうの昔に自分の手から離れた患者のその後のことなど自分の知る範疇ではありませんから、現時点での後遺障害診断書を作成する事に躊躇します。いろいろ八方手を尽くして、この難題を乗り越えました(文章では書けません)。結果、後遺障害等級7級4号を獲得できました。
 その後の示談交渉も保険会社としては、マニュアル外の話であり、結局、紛争処理センターでの仲介でも決裂、裁判突入かという段階で、保険会社担当者が転勤。新任担当者は、事案の複雑さに驚き、当方も、ご病気があり、長期の裁判に堪えられないということで、双方妥協点を見いだすことができ、示談となりました。90歳近く、要支援の等級ある方にある程度の主婦休損を認めてもらうことができて、まとまった金額となりました。依頼者に大変満足頂きました。本当に、大変な事案でしたが、将来に役立つ良い経験となりました。