それは、「医療の不信」に基づいた真摯な調査とそれに裏付けられた経験数の差です。
私は、後遺障害の認定に関わる6年の職務経験と年間200件を超える後遺障害相談を行い、過去の後遺障害等級獲得は、累積500件を超えます。しかし、数だけでは、意味がありません。たまたま等級が取れたレベルでは、何らの経験値というのは蓄積されません。十分な医療調査の上、目標等級に達する証明作業を十分検討した結果である後遺障害認定等級数が大切と考えます。

「医療調査は何故大切なのか?」

 ずばり、いい加減に処理されている事例があまりにも多いことに起因します。
私は、平成11年弁護士登録以来、大阪弁護士会交通事故委員会に所属し、日弁連交通事故相談センター高次脳機能相談員、同示談斡旋委員を経験させていただきました。加えて、後遺障害認定に関わる職務も拝命し、とても貴重な経験を6年間積むことができました。
 後遺障害認定の現場は、私に、後遺障害認定分野に存在する大きな問題点を示してくれました。それは、「医療の壁」です。壁を乗り越えなければ、適正な後遺障害に辿り着きません。
 後遺障害認定は、医証(診断書・カルテ・画像)の検討を中心に行われます。醜状痕以外、被害者との面談はありません。従って、後遺障害診断については、主治医がキーパーソンとなります。しかし、医師にも色々なタイプがいるのが現実で、十分な治療や検査がなされていなかったり、見落としがあったりします。怪我の場所が違うなど信じられないミスの診断カルテを見つけることもしばしばです。また、そもそも、どの医師も超多忙な状況にあります。5分や10分の診察で、完璧を求めることを期待するほうが、無理と言えます。後遺障害申請にあたっては、治療過程をレセプトや画像を通じて、全て検証していくことは、実はとても大切なのです。
弁護士だからこそ、時間をかけて画像を検証することができます。

「医師でもない弁護士が医療を検討できるのか?」

 無論、専門的な教育や治療経験を有していない弁護士が、治療方針を検討するわけではありません。しかし、医師との共同作業はできると思うのです。医師は、治療が主眼。弁護士は、後遺障害の証明が主眼です。つまり、目標とする分野が違うのです。
 交通事故外傷においては、たとえば、バイクから落ちるとき、手から落ちることが多く、その際、肩を痛めるなど、いくつかのパターンがあります。整形外科の分野でもかなり限られた分野ですので、弁護士でも経験を重ねれば、その分野での医学的知識が蓄積されます。
後遺障害は、経験が武器になる。 
 私は、疑問があれば医師に費用を払って面会を申し入れます。そういった活動の中で、医師ネットワークが広がり、議論の中で、自身の医学的知識が向上することに喜びを感じています。私は定期的に医学生や若手医師と一緒に、CTやMRI画像読影の勉強会に参加したりもしています。「知る喜び」をこの歳になって味わっています。

(法人代表 弁護士黒田悦男)