島根県の案件です。保険会社への約款無効も視野に入れなければならない事案で、地元弁護士は、誰も取り合ってもらず、遠路はるばる大阪の当事務所へ依頼がありました。弁護士的には、極めて興味深い案件でしたので、ご紹介いたします。

自損事故で、大腿骨解放骨折、膝関節可動域 伸展、屈曲あわせて25度ほどに制限される後遺障害が残存。この方は、免疫疾患の病気を有しており、もともと、正座はできないが、可動域としては、後遺障害等級に妥当しない程度の可動域制限でした。自損事故ですので、人身傷害保険特約における後遺障害等級が問題となりました。
 保険会社は、現状、10級相当(通常の半分以下の可動域)の障害が残っていることは争いませんが、免疫疾患の影響があるはずであるとして、「疾病の影響より同条の傷害が重大となった場合は、当会社がその影響を受けなかった時に相当する損害金を算定します」という約款を文言を盾に、12級の認定をしてきました。
 既存障害があって、それよりも障害が過重になったときは「現障害等級ー既存障害」で算定される自賠責と同様の加重規定が別に約款にはあります。それに該当しない場合としてこのような別規定があるようですが、重大な事故で、重篤な関節可動域に制限がでているのに、病気が無かったら軽度の可動域制限に止まるはずだという一方的な主張には、ちょっと、感覚的に、納得しがたいものでした。なんで、免疫疾患で、可動域制限重くなったといえるの?どう考えても外傷でしょ!!ということで、当職が入って交渉を開始しました。しかし、保険会社さんも、明確な答えを出すことなく、裁判となりました。事故の大きさ、手術の過程、免疫疾患の治療状況を主治医との面談で意見書を作成してもらうなどして、既存障害と現状の障害の因果関係を否定する活動をした結果、裁判所からの和解勧告がありました。
 元々、足が悪かったところがあることはこちらも否定していないところで、その趣旨に沿った、現状障害より30%カットした金額の勧告でした。これは、「10級-12級」(これは覚悟していた)よりも金額が多く、こちらにかなり有利な内容でした。相手もこれを受け入れ、和解成立しました。
 思うに、このような曖昧な規定で、無理やり現実とは異なる12級という認定をする規定に問題あると思います。「訴因減額〇〇%」という実情に応じた柔軟な対応ができる規定に約款を改めるべきと感じました。