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交通事故による高次脳機能障害

 人間が、他の動物と違うところとして、箸を使って食べたり、相手と言葉でコミュニケーションをとったり、いろいろな計画を立てて実行できる。などが、挙げられます。

 その機能を高次脳機能というのですが、交通事故などにより脳に傷がつくと、見た目には普通なのに、忘れっぽくなったり、相手にうまく伝えられなかったり、判断力が低下したりして、社会生活に適応しにくくなります。

 これを、高次脳機能障害と呼びます。

 脳の構造として、大脳の表面3ミリくらいの厚さの大脳皮質というところが、思考などの高次脳機能を担当しているとのことです。
 たった、あんな大きな脳で使っているのは表面3ミリとは驚きです。その他の部分は、神経繊維で、コンピューターで言えば、ICチップとそれに繋がる配線といった感じでしょうか。この神経繊維は、絹の糸のような細さですから、切断等があっても、レントゲンやCTといった画像には写りません。交通事故の特徴に、回転運動がかかることが多いというのがあります。頭蓋骨の中にぷかぷか浮いている脳が回転運動等で揺られ、神経繊維(回線)がプチプチ切れてしまうのです(これを「びまん性軸策損傷」といいます)。

 コンピューターのICチップが計算してもそれを伝達できない状況になるのです。

高次脳機能障害の種類

高次脳障害の種類、特徴としては次のような症状が挙げられます。

  • 失語・失行・失認
  • 新しいことが覚えられない(記憶障害)
  • 気が散りやすい(注意障害)
  • 行動を計画して、実行することができない(遂行機能障害)
  • 周囲の状況に合わせた適切な行動ができない(社会的行動障害)
  • すぐ怒ったり、泣いたり、子供っぽいことをしたり、自己中心的になったり、強いこだわりをもちだす(人格変化)

 上記の症例が複数見受けられることもあります。

 障害は、人によって程度が異なり、本人は、先ず、(障害を負った状態ですから)ら気が付きませんし、人からも理解されず、厄介者として扱われてしまいます。

交通事故などで、頭部を損傷する前までは、こんなことはなかったのにと感じたら、一度病院で検査されることをお勧めします。


高次脳機能障害Q&A

Q1:高次脳機能障害とはなんですか?

 交通事故などで脳が損傷されると、記憶能力の障害、集中力や考える力の障害、行動の異常、性格の変化、言葉の障害が生じることがあり、これらの障害を『高次脳機能障害』と言います。

Q2:高次脳機能障害の症状はどういったものがありますか?

 高次脳機能障害の代表的な症状として、認知障害と社会的行動障害があります。
 認知障害は、理解したり考えたりする能力などの障害です。社会的行動障害は、行動の障害です。

Q3:認知障害にはどんな種類がありますか?

 認知障害には、①記憶障害、②注意障害、③遂行機能障害、④病識欠落、⑤半側空間無視、⑥失語、⑦失行、⑧失認などがあります。

Q4:記憶障害には、どういう特徴がありますか?

 記憶障害には、事故以前の記憶は残っているが、新しいことを記憶しにくい短期記憶障害があります。たとえば、すぐに忘れてしまう、道順がわかなくなる、同じことを何度も質問するなどの症状があります。

Q5:注意障害には、どういう特徴がありますか?

 注意障害は、注意力や集中力が続かないなどの特徴があります。たとえば、集中できず落ち着かない、物をなくすことが多いなどの症状があります。

Q6:遂行機能障害には、どういう特徴がありますか?

 遂行機能障害は、目的を定めたり、その目的を実現させるための段取りを立てたりすることができないほか、段取りを実行できないなどの特徴があります。たとえば、見通しを立てられない、計画を立てて物事を進めることができない、効率よく物事を進められない、すぐに諦めてしまうなどの症状があります。

Q7:病識欠落には、どういう特徴がありますか?

 病識欠落は、自分の障害を認識することが難しいなどの特徴があります。

Q8:半側空間無視とは、どういう症状のことをいいますか?

 半側空間無視とは、左または右の半側に気付かない状態のことで、左側の半側空間無視が多くみられます。たとえば、左側の食べ物を残す、左側の人や物にぶつかるなどの症状があります。

Q9:失語とは、どういう症状のことをいいますか?

 失語とは、言語の障害です。たとえば、話しかけられても答えられない、間違った言葉が出る、話し方が遅い、発音が不明瞭などの症状があります。

Q10:失行とは、どういう症状のことをいいますか?

 失行とは、明らかな麻痺はないのに、道具が上手に使えなかったり、間違った使い方をしたりするなどの特徴があります。たとえば、今まで使っていた道具の使い方がわからない、着替えの時に上着・ズボン・前後・左右の区別ができないなどの症状があります。

Q11:失認とは、どういう症状のことをいいますか?

 失認とは、視覚、聴覚、触覚などの知覚機能において、対象を把握できない障害であり、視覚失認、聴覚失認などがあります。視覚失認は、目の前に物があっても探し出せない、図形がわからないなどの症状があります。聴覚失認は、音は聞こえるが何の音かわからない、声は聞こえるが意味がわからないなどの症状があります。

Q12:社会的行動障害どんな種類がありますか?

 社会的行動障害には、①依存性・退行、②感情コントロール低下、③欲求コントロール低下、④対人技能拙劣、⑤固執性、⑥意欲・発動性の低下、⑦易疲労性、⑦反社会的行動などがあります。

Q13:依存性・退行には、どんな特徴がありますか?

 依存性・退行は、子どもっぽくなったり、すぐに家族を頼るようになるというような特徴があります。

Q14:感情コントロール低下には、どんな特徴がありますか?

 感情コントロール低下は、「怒り」や「笑い」などの感情のコントロールが難しいという特徴があります。
たとえば、すぐにキレる、すぐに暴言を吐く、すぐに乱暴するなどの易怒性があり、注意を受けている時や悲しい場面での笑ってしまうなどがあります。

Q15:欲求コントロール低下には、どんな特徴がありますか?

 欲求コントロール低下は、欲しいと思うと我慢できないという特徴があり、たとえば、お菓子は1袋全部食べてしまったり、お金も手元にあるだけ使ってしまうというように自制ができない症状があります。

Q16:対人技能拙劣とは、どんな症状のことをいいますか?

 対人技能拙劣は、他人と上手く付き合えず、日常生活に問題が生じる状態です。
たとえば、相手の気持ちを読めない、自分の意見ばかり言い張るなどのほか、人に強く言われると断れないなどの症状があります。

Q17:固執性とは、どんな症状のことをいいますか?

 固執性は、どうでもいいささいなことにこだわる、物事にこだわって次のことができない、一度決めたことを状況に合わせて変更できずにやり続ける、途中で変更されると混乱するなどの症状があります。

Q18:意欲・発動性の低下とは、どんな症状のことをいいますか?

 意欲・発動性の低下は、やる気がでない、ボーっとして自分から何かしようと行動を起こさない、促されないとやっていたこともやめてしまうなどの症状があります。

Q19:易疲労性とは、どんな症状のことをいいますか?

 易疲労性は、脳神経が疲れやすいことを言い、すぐに疲れる、朝起きられない、起きていても眠い、ぼーっとしている、姿勢を保てないなどの症状があります。

Q20:反社会的行動とは、どんな行動のことをいいますか?

 反社会的行動は、社会的倫理を逸脱するような行動を起こすことであり、たとえば、盗み、暴力、性的行動などがあります。

Q21:高次脳機能障害の後遺障害等級は、どういったものがありますか?

 自賠法施行令別表一第1級1号【神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの】
第2級1号【神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの】
自賠法施行令別表二第3級3号【神経系統の機能に著しい障害を残し、心身労務に服することができないもの】
第5級2号【神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの】
第7級4号【神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの】
第9級10号【神経系統の機能又は障害を残し、服することができる労務が相当程度に制限されるもの】
があり、後遺障害の程度に応じて等級が認定されます。

Q22:高次脳機能障害の申請に必要な書類は、どのようなものがありますか?

 まず、高次脳機能障害として審査されるためには、頭部外傷後の意識障害、初診時における頭部外傷の診断、頭部外傷の画像所見が重要になります。
 そして、高次脳機能障害の程度を明らかにするために、病院で神経心理学的検査を受ける必要があります。また、事故前後における日常生活の変化も主張する必要があります。
 そこで、高次脳機能障害の申請においては、後遺障害診断書のみならず、①頭部外傷後の意識障害についての所見、②神経系統の障害に関する医学的意見及び神経心理学的検査の結果、③日常生活状況報告を提出する必要があります。

Q23:高次脳機能障害の等級認定はどのようなものがありますか?

高次脳機能障害に関しては,労災保険の認定基準があります。
しかし,労災保険は就労者を対象とするのに対し,交通事故では,子どもや高齢者も被害者となります。
そこで,交通事故では,労災保険とは異なる検討をする必要があり,その検討にあたっては,「自賠責保険における高次脳機能障害認定システムについて」(報告書)(平成12年12月18日)で示された「脳外傷による高次脳機能障害の等級認定にあたっての基本的な考え方」が参考になります。
具体的には以下の表のとおりです。

脳外傷による高次脳機能障害の等級認定にあたっての基本的な考え方
障害認定基準 補足的な考え方
別表第1
1級1号 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し,常に介護を要するもの 身体機能は残存しているが高度の痴呆があるために,生活維持に必要な身の回り動作に全面的介護を要するもの
別表第1
2級1号 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し,随時介護を要するもの 著しい判断力の低下や情動の不安定などがあって,一人で外出することができず,日常の生活範囲は自宅内に限定されている。身体動作的には排泄,食事などの活動を行うことができても,生命維持に必要な身辺動作に,家族からの声掛けや看視を欠かすことができないもの
別表第2
3級3号 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し,終身労務に服することができないもの 自宅周辺を一人で外出できるなど,日常の生活範囲は自宅に限定されていない。また声掛けや,介助なしでも日常の動作を行える。しかし記憶や注意力,新しいことを学習する能力,障害の自己認識,円滑な対人関係維持能力などに著しい障害があって,一般就労が全くできないか,困難なもの
別表第2
5級2号 神経系統の機能または精神に著しい障害を残し,特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの 単純繰り返し作業などに限定すれば,一般就労も可能。ただし新しい作業を学習できなかったり,環境が変わると作業を継続できなくなるなどの問題がある。このため一般人に比較して作業能力が著しく制限されており,就労の維持には,職場の理解と援助を欠かすことができないもの
別表第2
7級4号 神経系統の機能又は精神に障害を残し,軽易な労務以外の労務に服する事ができないもの 一般就労を維持できるが,作業の手順が悪い,約束を忘れる,ミスが多いなどのことから一般人と同等の作業を行う事ができないもの
別表第2
9級10号 神経系統の機能又は精神に障害を残し,服する事ができる労務が相当な程度に制限されるもの 一般就労を維持できるが,問題解決能力などに障害が残り,作業効率や作業持続力などに問題があるもの